DOCUMENTARY OF AKB48 NO FLOWER WITHOUT RAIN 少女たちは涙の後に何を見る?

AKB48を語る時に「よく知らないのだが」とか「ファンというわけではないが」という常套句を枕詞に、的外れの持論を展開する輩が大発生してるわけだが、知らないなら語るなよウゼーから、といつも思う。
よく知ってるからこそ楽しめるものというものは世の中にたくさんあって、門外漢にはちっともピンと来ないなんてのはどこにでもある話。ピンと来ないからといって大げさに揶揄したってなんの意味もない。これはエンタメであって、国民がどうしても語らなければならない政治とか生活の問題じゃない。
なんでこんなことを書くかというと、本作はAKB48をよく知ってる人やファン以外の人が劇場に足を運んでも、作品そのものの良し悪しが全く判断できないと思うからだ。生半可な知識でこの映画を観ても、なにがポイントなのか、ほとんど理解できないだろう。なので興味のない人はぜひ「観ない・語らない」という選択をしてほしい。
物語はよりディープになり、HKTと初顔合わせのあとSKEの中西優香のもとで嗚咽する指原、恋愛禁止について語る菊地あやか、増田有華の活動辞退発表の影で泣き続ける大島優子、前田敦子卒業の裏側でさまざまに交錯する各メンバーたちの思い…こういったシーンの数々は、個々人のプロフィールを知らないと共感するのは難しい。しかしAKB48をよく知る人にとっては、これほど重い内容もない。
映画は、もはや楽しいシーンなんて”りのりえコント”くらいのもので、あとはひたすら過酷な少女たちの葛藤が描かれていく。
過酷なシーンの連続の中でも特に、平嶋夏海の辞退報告の舞台裏でむせび泣く戸賀崎支配人の姿と、「私たちの恋愛は誰からも応援されない」と語る高橋みなみの表情は、とてつもなく重く哀しい。ともにAKB48の屋台骨を支える重要メンバーである二人が、自らが構築するシステムに翻弄されていく姿を残酷に切り取っている。
東京ドームの舞台裏で、衣装や髪を直しメンバーに出番を指示しながら声を上げて泣くたかみな、移動通路の途中で泣き出し座り込む峯岸、前田に卒業を思いとどまらせようとする篠田、唐突に卒業を発表する板野、総選挙の結果にショックで泣き崩れる高城や光宗、組閣で昇格できずに号泣する研究生、ルール違反で辞めていくメンバーたち…。
映画は、苦労も悲しみもすべては立ち位置0=センターを目指すため!という作り方をして、一応の落とし所を作ってはいる。しかし実際は在籍メンバー全てがセンターを狙えるわけではなく、それはこの若さにして自らの可能性の限界を知ってしまうということでもある。行くも退くも地獄というある種異常な芸能世界の有り様を、冷静に見つめ撮り続ける高橋監督の眼差しは、敗れ去る者たちへの慈愛に満ちている。
<Raiting>
前作は過酷な内容であっても戦場映画のカタルシスのようなものが確かにあった。圧倒的な輝きがあった。今回はそういうピントの山はないが、夢を追い夢に敗れる少女たちのリアルな姿を丁寧に追った。これはもはやアイドル映画でもなんでもない。AKB48という素材を用いて魂の葛藤を真摯に描いた、高橋監督の哲学が反映された見事なドキュメンタリー作品だ。(しかし八割方みたことのある映像というのはいちじるしい萎えポイント…)




<Trailer>

テーマ:映画館で観た映画
DOCUMENTARY OF AKB48 NO FLOWER WITHOUT RAIN 少女たちは涙の後に何を見る?@ぴあ映画生活
評価:
![]() --- 東宝 ¥ 3,500 (2012-04-20) |
評価:
![]() --- 東宝 ¥ 3,099 (2011-04-22) |
- 2013.02.10 Sunday
- 映画
- 23:21
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