ゼロ・ダーク・サーティ(Zero Dark Thirty)
世界を駆け巡ったビン・ラディン殺害のニュース。その結果に至るまでの10年の捜査と特殊部隊による急襲シーンまでを丹念に追った作品。監督は『ハート・ロッカー』でアカデミー賞を受賞したキャスリン・ビグロー監督。
9.11のアメリカ同時多発テロ事件の首謀者とされ、それ以前のアメリカとの関係やサウジとブッシュ政権の癒着など、真偽入り乱れた情報が錯綜したビン・ラディンという人物。彼はイラクの大量破壊兵器の査察から開戦まで突っ走るアメリカにとっての”正論”を唯一補強する存在だった。
その最重要人物ビン・ラディンを驚くほどの執念で追い続け、ついに居場所を特定するのがCIAの女性捜査官マヤ。彼女は拷問を主とした捜査方法に最初は抵抗を感じながらも、仲間が殺されたことを契機に取り憑かれたようにビン・ラディンを追い続ける。
本作は、ほとんどマヤの一人舞台といった内容だが、ジェシカ・チャステインが華奢で聡明な捜査官を見事に演じている。
アメリカが威信をかけ、膨大な時間と資金と人間を費やしてたどりついたであろうビン・ラディン発見というミッションを、映画では彼女一人の功績として集約させて描いている。その大胆な構成を荒唐無稽に感じさせないジェシカ・チャステインの演技は素晴らしいの一言。彼女の存在感、演技の深みが本作に迫真性を与えている。
上映時間のほとんどが派手なアクションを排した情報戦で、ややもすれば地味なシーンが続くのだが、目を離す隙もないほどの緊迫感が画面から溢れ出ていて、最後まで一気に見せる。
ラストのアメリカ軍対テロ特殊部隊による急襲シーンは凄まじい。まず、ヨルダンに作られたというセットが素晴らしい。そして部隊の動き、爆破シーン、殺害の様子など、怖いほどのリアルさで迫ってくる。映画を楽しんでいるというよりも、自分が現場に入り込んで恐怖を肌で感じているような錯覚に陥る感覚だ。
ビン・ラディンを捕縛ではなく殺害するというミッションの理由付けを、作中ではマヤの仲間を殺されたことへの怒りをとして成り立たせていたが、実際にはどうだったのか。真相はまた別のところにあるのだろう。
<Raiting>
本筋とは関係ないが、相変わらずカメラワークがいい。アングル、構図、ボケ味を強め主体を浮き立たせるカメラの作り出す絵は、どのシーンを切り取っても1枚の写真として残したいほど素晴らしい。作品は監督の技量、構成、俳優陣の演技を含めて、きわめて精緻に作られた第一級の作品だ。
<Trailer>
あー
テーマ:映画館で観た映画
ゼロ・ダーク・サーティ@ぴあ映画生活
- 2013.02.17 Sunday
- 映画
- 00:49
- comments(0)
- trackbacks(1)