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希望の国

希望の国

園子温監督による原発事故を扱った作品。

園子温は『ヒミズ』で東日本大震災をリアルタイムに取り上げた。大震災の映像を挿入したことについては賛否両論あり、否定派による強烈な園子温叩きもあった。

だが、被災地を故郷に持つ身としては、どんな形でもいいからとにかく”被災地以外の人々”にメーッセージを送ってくれ!という気持ちに応えてくれた『ヒミズ』は、全面的に肯定できる作品だった。映画の出来もラストシーンの改変を含めて今でもすこぶる良いと思っている。

『希望の国』は解釈が難しい。「日本に住んでいて、今、原発事故を描かないアーティストなんて存在意義あるか?」という園子温の強烈な思いは理解できるし、その通りだと思う。どう描くかより何を描くかだ、と言われればそうも思う。

でも、正直なところ映画としては期待したほどのものではなかった。まあ勝手に期待値を激しく高めていたのではあるが。

各登場人物は明確に分類されていて、それぞれがある特定の人々の集合意識のメタファーになっているのは分かる。しかし福島そのものではなく、「福島原発事故から何年か経っている長島県という架空の場所」という設定のため、切迫感や現実感が薄まってしまった。

なぜ今の福島を徹底取材しながら、ありのままの福島を描かなかったのか?ドキュメンタリーではダメだったのか?

園子温は映画監督であり、その作品は常に彼のメッセージに溢れている。本作を読み取れば、園子温が自分に課した役割とは、起こったことの詳細を記録し公開し警鐘を鳴らし続けることではなく、未曾有の大災害に遭遇した人々が、何を救いとして(拠り所として)自らの人生や生活を再生するのか?ということに焦点を当てることなのだろう。

そう考えれば本作は『愛のむきだし』などに連なる見事な園子温作品であり、人間の本質をえぐろうとする意図に満ちた非常にグロテスクな作品だという評価もできる。なぜドキュメンタリーではダメだったのか、それは福島に実在する人々にその役を背負わせるのはあまりに過酷だからだ。

しかしラストシーンの「愛があれば大丈夫♪」はすごい。全体のトーンを破壊してぐちゃぐちゃにして、それでいてしっかりと作品性を際立たせる見事な演出だと思う。

死を選んだ両親と、どこにも逃げ場のない息子夫婦は、結局「愛がすべて、愛があれば大丈夫!」という点で一致している。死とは選択しようと逃げようと必ず訪れるもの、と定義されているようで残酷だと思う反面、死ぬまでどう生きるかということが死の価値を決定するということでもある。

神楽坂恵演じる小野いずみが宿した命を狂信的に守ろうとすることで示したのは「死の価値とはその思想や行動が後世にどう引き継がれていくかということ」というメッセージであり、それはまさしく後世の人間たちが希望の国を作っていくということに他ならない。

<Raiting>
役者の能力を限界まで引き上げる園子温の演出力は健在で、俳優陣はすばらしい仕事をしている。しかし映画作品としては期待はずれというのが正直な感想。


<Trailer>


あー
テーマ:映画館で観た映画
希望の国@ぴあ映画生活

評価:
---
Happinet(SB)(D)
¥ 3,503
(2011-08-02)


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