苦役列車
父親が性犯罪者で一家離散したため中卒の身で肉体労働に従事する『北町貫多』が、厄介な自我意識を抱えて不器用に生きていく様を綴った本作は、原作とは手触りがかなり違っているが、邦画としてはすこぶる出来のいい作品だ。
『友ナシ金ナシ女ナシ』 は本当に最低のクズなのか?
自堕落で不潔でねじくれている 『北町貫多』はクズの呼称に値するとはいえ、結局原作の小説『苦役列車』のとてつもない評価を考えれば、実は誰もがどこかで 『北町貫多』の生き様に良くも悪くも共感してるわけだ。
『北町貫多』を最低のクズとはいい切れない”今”という時代の良し悪しは別にして、今でなければ『苦役列車』という物語が広く受け入れられることはなかっただろう。そういう意味で本作の映画化は時代背景は古いが内容はジャストタイミングだといえる。
それにしても森山未來の突き抜けた存在感はすごい。主人公と同様な生活をしながら撮影に臨んだという情熱的な役作りの成果は、すべてのシーンからビシビシ伝わってくる。とくにラスト近くのパンツ一丁で泣きながら走るとてつもなく醜い(あくまでビジュアル的に)あのシーンをやれといって出来る若手役者はそういないだろう。
高良健吾の役作りも見事。『北町貫多』と対照的な”持てる側”の『日下部』を好演している。また『北町貫多』の連星ともいえる『高橋岩男』役のマキタスポーツの演技力には改めて舌を巻く。これほど台詞にキレのある役者は本職でも数少ない。
さて話題の前田敦子だが、そもそも出番が少ないので賛否を声高に語るほど鑑賞側に情報があるわけではない。ただ『桜井康子』という朴訥とした役柄にはフィットしていた。下着スケスケもキスシーンもすべてが淡い印象だが、これが前田敦子の持ち味になっていくのかもしれない。女優前田敦子については本稿とは別に記事にしたいと思うが、とりあえず本作においてはとても良かったと思う。
最後に、原作でも多数のブログ等で抜粋引用された『北町貫多』の台詞を記しておこう。この肥大しねじくれた自意識、根拠なき自己評価の高さが、最終的には莫大なエネルギーとなって執筆という創作行為に雪崩れ込んでいくのだから、やはりこれこそ本作の根幹である。
「出たぜ。田舎者は本当に、ムヤミと世田谷に住みたがるよな。まったく、てめえらカッペは東京に出りゃ杉並か世田谷に住もうとする習性があるようだが、それは一体なぜだい? おめえらは、あの辺が都会暮しの基本ステイタスぐれえに思ってるのか? それもおめえらが好む、芋臭せえニューアカ、サブカル志向の一つの特徴なのか? そんな考えが、てめえらが田舎者の証だってことに気がつかねえのかい? それで何か新しいことでもやってるつもりなのか? 何が、下北、だよ。だからぼくら生粋の江戸っ子は、あの辺を白眼視して絶対に住もうとは思わないんだけどね」
<Raiting>
ある時代を背景に若い主人公の精神的葛藤を描くという点では『ノルウェイの森』と構造は同じなんだけど、両者の世界観の差が現実の世の中の二極化を如実に表してるようで、なんだか切なくなる。持てる者は喪失感にもがき苦しみ、持たざる者は何かを得ようとジタバタする。個人的には圧倒的にこっちが”俺の現実”。
<Trailer>
あー
テーマ:映画館で観た映画
苦役列車@ぴあ映画生活
- 2012.07.15 Sunday
- 映画
- 15:43
- comments(1)
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