ものすごくうるさくて、ありえないほど近い(Extremely Loud and Incredibly Close)
何度も不覚をとってしまった。
まず、観たいことは観たいんだけど、いまいち足が重いなあ、と思っていたこと。「感動させますよ、だから感動してください」という映画はこっちも気力・体力がいるので、どうもなあ…などと不覚にも思っていたのだが、そういうお涙頂戴映画ではなかった。先入観で判断するのはよくない。
結果的に前売り券を持っていたから観に行ったのだが、その心持ちがまさに不覚。実に見事に構成された素晴らしい作品だった。
9.11で最愛の父親を失った少年オスカー。アスペルガー症候群のテストを受けたことがある、ちょっと変わったオスカーを演じるのが12歳のトーマス・ホーン。映画の中盤までオスカーの性格がキツすぎて「なんだこの糞ガキ」とか思っていた。しかし話が進むにつれてトーマス・ホーンの演技が凄まじい才能に溢れていることに気付く。
トーマス・ホーンは、「マジでうぜえな、このガキは」などど不覚にもこちらに思わせるほど、「自分の感情をうまくコントロールできないオスカー」を見事に演じきっていたわけだ。トーマス・ホーンが、もっと子供らしく可愛らしいキャラだったら、これほど心に染みる作品にはならなかっただろう。
サンドラ・ブロック演じる母親の行動、優しさに、不覚にもさっぱり気が付かなかった。原作を読んでなくたって、普通に考えたらサンドラ・ブロックほどの女優があんなに影の薄い扱われ方のまま終わるわけないんだから、気付きそうなもんだが…。しかしサンドラ・ブロックの演技はよかった。抑えても抑えても溢れ出す感情をしっとりと演じ、素晴らしい母親像を描き出した。
9.11によって愛する人や親しい人を失い、自らも心を失ったまま悲しみの中で暮らす人々が、どうやって魂の救済を得ていくのか、本作品はそれをオスカー少年の鍵穴探しになぞらえる。父親の遺品から見つけた鍵に合う鍵穴を探してオスカーは週末ごとに旅に出る。そして自分が癒されると同時に、自分もまた少しずつ誰かを癒しながら、かかわった人々が生きる希望を見出していく。
父親と母親がいて、そしてそれぞれにまた父親と母親がいる。人は家族を作り、かけがえのない大切な”何か”を共有し継承していく。ものすごくうるさくてわずらわしいかろうが、人は誰かと何かを共有することで自分の存在価値を認識し、悲しみを乗り越え希望を持って生きていけるのだ、ということを改めて確認させてくれる作品だ。
<Raiting>
失った何かをその人なりの方法で埋めていくという、実にアメリカ文学らしい物語。話が進むにつれてどんどん引き込まれていく。感動の余韻が長く続く一作。
<Trailer>
あー
テーマ:映画館で観た映画
ものすごくうるさくて、ありえないほど近い@ぴあ映画生活
- 2012.02.28 Tuesday
- 映画
- 17:14
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