ドラゴン・タトゥーの女(The Girl with the Dragon Tattoo)
裁判沙汰で金も名誉も失った敏腕記者と天才ハッカーがおぞましい失踪事件を解明していくスリラーアクション。
スウェーデン版『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』に続く映画化だが、スウェーデン版では、天才ハッカー・リスベットを演じたノオミ・ラパスの強烈なキャラクターとミカエル・ニクヴィストの渋い演技が素晴らしく、猟奇的犯罪の謎解きの面白さもあって、非常に質の高い作品に仕上がっていた。デビッド・フィンチャー監督がこの独特の世界観をどう観せてくれるか、非常に楽しみにしていた。
結論からいうと、もともと原作が面白い物語なので、フィンチャー版『ドラゴン・タトゥーの女』も話としては当然面白い。フィンチャー監督は『ソーシャルネットワーク』同様オーソドックスで重厚な映像とテンポの良いカット割りの組み合わせで、実になめらかに物語を進めていく。ここにきてフィンチャー節みたいなものが明らかに確立した感がある。
ただテンポの良さが仇となって、スウェーデン版にあった紆余曲折しながら謎を解いていく面白さが失われてしまった。また編集の上手さが逆に物語を整理しすぎたのか、各登場人物の掘り下げや失踪事件に絡む一族の複雑な関係性の描写がかなり希薄で、謎が解かれてもそれほどカタルシスを感じさせてくれなかった。
ヴァンゲル一族のなんともいえない”薄気味悪さ”や、最北の地の”極寒”の描写、身も心も凍っていく殺伐とした雰囲気、暴力表現のエグさなど、スウェーデン版にあった独特の作品性は再現されず、わりと普通の(というか馴染みのある)サスペンス映画になってしまったような気がする。
今回、リズベット役には大物女優たちの売り込みを押しのけて、あの『ソーシャルネットワーク』でザッカーバーグの元カノを演じていたルーニー・マーラが大抜擢されている。「どすの利いたノオミ・ラパス版リズベット」vs 「かわいいルーニー・マーラ版リズベット」といった感じで、好みが分かれそうだ。
個人的にはルーニー・マーラは悪くなかった。ノオミ・ラパスのある種奇形的な異質感、突出感、凄み、ハマリ度にはまったく及ばないが、女性として魅力のあるリズベット像は新鮮だった。オールヌードを厭わない体当たり演技も熱意が伝わってきたし、変装シーンやラストの切ない感じはルーニー・マーラのかわいさがうまく作用していて、個人的には満足だった。
ダニエル・クレイグはイギリス人俳優としての素性の良さがにじみ出ていて、007とはまた違った役者としての魅力を感じさせてくれた。
<Raiting>
この作品単体で鑑賞すれば、それなりに評価の出来る手堅いサスペンス映画といえるかもしれない。ただスウェーデン版と比較すると突出して良い部分がないのも事実。『移民の歌』がド迫力で流れるオープニングはここだけ何度も観に行きたいくらいカッコイイ!
<Trailer>
<スウェーデン版予告>
あー
テーマ:映画館で観た映画
ドラゴン・タトゥーの女@ぴあ映画生活
評価:
--- アミューズソフトエンタテインメント ¥ 2,954 (2012-02-03) |
- 2012.02.22 Wednesday
- 映画
- 02:23
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