calendar

S M T W T F S
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      
<< March 2024 >>

Profile

hagacube
管理人:hagacube
このブログでは、劇場公開時に観た映画、DVD、オンデマンド動画などの映像作品を中心に、音楽の新譜/旧譜、スポーツなどエンターテインメント全般について、複数ライターが極私的な見解を書いています。
◆Twitterはこちら⇒ hagacubeをフォローしましょう

selected entries

categories

archives

Ranking

        

recent comment

recent trackback

すいかエンタ!について。

記事にはネタバレを含むものもありますので、未見の作品や各スポーツなどについて、先に結果などを知りたくない方はご注意ください。

当ブログの運営はSuika Cube Inc.が行っています。
■自由な発想でデジタルコンテンツをプロデュース | Suika Cube Inc.

100,000年後の安全



福島原発事故は世界中に衝撃を与えた。とくにチェルノブイリを経験しているヨーロッパの各国は脱原発を標榜し始めている。

当事国である日本が欧米ほどパニックに陥ってないのは、日本人の特性なのか政府とメディアが巧妙なのか、どちらにしても電力の安定供給を錦の御旗に、いまだに原発を推進しようという組織的圧力も大きい。

しかし問題は”いまそこにある事故”だけではない。原発が危険なのは直接的な事故や攻撃による破壊だけではなく、原発の運用に関して根本的な問題が壁のようにそそり立っている。それが使用済核燃料の処理問題だ。

原発を動かし発電を行うと必ず発生する放射性廃棄物。高レベル放射性廃棄物は半減期が数万年に及ぶものもあり、人間が安全に取り扱えるまでどこかで保管し続けなくてはならない。現時点でも世界中の原発から25万トンもの高レベル放射性廃棄物が排出されているが、ある一国を除いてその最終処分場を持つ国は世界にひとつもない。

世界唯一の最終処分場である、フィンランド・ユーラヨキ自治州のオルキルオト島に建設中の『オンカロ』。それが本作の主人公である。

オンカロはフィンランド語で「隠し場所」。この施設は、古代から安定している地層を500mも掘り進んだ先に広大な貯蔵庫を作り、2012年から100年間、放射性廃棄物を貯め続け、パンパンになったところで入り口を厚いコンクリートで封鎖しようというもの。

放射性廃棄物の問題は原発を持つすべての国が抱える大問題である。福島原発の事故が収束しようがしまいが、それとはまったく別に現在進行中の世界的な問題だ。何が問題といえば、高レベル放射性廃棄物はオンカロのような施設に閉じ込めようが、そのものが安全なレベルになるまでに10万年もかかるということ。

本作では放射性廃棄物をどう処理すべきかという議論もすすめてはいるが、オンカロの建設そのものを大きな問題としているわけではない。宇宙に廃棄する方法や半減期を早める技術が確立していない以上、現実的に考えれば地下に埋めるしかないのだ。

フィンランドの関係者たちの議論の中心は10万年後の地球のことだ。10万年という気の遠くなる未来に人間が果たして存在しているのか、その時に核をコントロールできる文明を持ち得ているのか、さらには現在と隔絶した文明が存在したとしたら、オンカロが非常に危険な構造物であることを理解できるのだろうか…。

地下に密閉された巨大なオンカロを、もし未来の人間が発見したときに、「ここを立ち去れ」「ここに入るべからず」と記された場所に興味を持たないわけがない。もしかしたら宗教的モニュメントと捉えるかもしれないし、宝の山と考えるかもしれない。「絶対に開けてはならぬ!」と語り継げば継ぐほど、オンカロの安全は脅かされることになる。

キリストが誕生してからわずか2千年程度の人類が、10万年後の人類や地球に過酷な影響をあたえるかもしれない原子力というパンドラの箱を開けてしまった。もちろん未来の人類は核を完全にコントロールする技術を確立しているかもしれない。そうなれば今の問題など笑い話になってしまうだろう。しかし、今現在コントロール出来ないものを無責任に推進しようとする人間が、被災地である日本にすらいることに心から恐怖を感じる。

本作の描く恐ろしさは、いまなにかが起こる恐怖ではなく、未来になにが起こるか誰にもわからないという想像上の恐怖だ。色味のない厳寒の風景の中にあるオンカロの映像描写は、底冷えがするような恐怖に満ちている。まさに文明の墓場のような巨大な空虚がそこにある。

<raiting>
内容は暗く重いが内容はとても分かりやすい。廃棄物の処理という避けては通れない問題に対しフィンランドはひとつの答えを提示している。原発を考えるうえで本作は際立ったドキュメント性を放射している。ただ面白いってわけではないので、寝る人もいるだろうと思う(^_^;)


<Trailer>


テーマ:映画館で観た映画
あー
100,000年後の安全@ぴあ映画生活


コメント
コメントする








   
この記事のトラックバックURL
トラックバック