ブラック・スワン(Black Swan)
ナタリー・ポートマンがアカデミー賞主演女優賞を獲得した話題作。もともとは『レスラー』とひとつの企画だったという本作。リアルな肉体パフォーマンスを見せることで成り立っている業種という意味で、ダーレン・アロノフスキー監督が『レスラー』の姉妹編とよぶのも納得出来る。
プロット自体は単純で、バレエに限りなき情熱を燃やす純粋なアーティストが、表現すべき作品に身も心も囚われて精神に変調をきたしていくというもの。筋が単純なだけに凡作と評する人もいるが、主題は精神変調ではなくその先にある自己の昇華だ。
もともとバレエをやっていたうえに、自費で1年ものトレーニングを積んだというナタリーの肉体は素晴らしい。ムキムキの女の子はあんまり趣味じゃないとはいえ、仕上がり具合は見事の一言!
ナタリー・ポートマンも美しいがライバル役のミラ・キュニスも美しい。そもそもが対照的な美しさを持つだけに、相反する役柄でしのぎを削る二人の演技は見応え充分。ベッドシーンだけでもお金を払う価値がある?!
ダーレン・アロノフスキー監督によると予算の半分しか集められなかったそうだが、これぞまさしく映画館で観るべき映画作品! ほとんどのシーンが練習スタジオと自宅アパートだけで演じられるシチュエーションドラマなのだが、スケール感、粗粒子を用いた印象的な映像、自らを追い込みまくった感ありありの鬼気迫る演技、素晴らしい音楽など、映画が持つポテンシャルをすべてつぎ込んだような、重厚でスリリングでドラマティックな傑作だ。
重要なバレエシーンも素晴らしい出来で、ボディダブルも素人目にはまったく問題ないレベル。抜群の編集テクニックとCG効果を駆使してナタリー・ポートマンが実際に踊っているとしか思えない映像を楽しませてくれる。
元バレリーナで娘を溺愛する母親の存在、ヴァンサン・カッセル演じる超一流振付師トマスによる厳しい注文、ライバルのリリーに対する歪んだ感情など、白鳥の湖のプリマに選ばれたがゆえに襲いかかってくるプレッシャーによって精神を病んでいく主人公ニナ。純粋なだけに二役となる官能的なブラック・スワンを表現できないニナを、ナタリー・ポートマンは研ぎ澄まされた肉体と感情表現を通して見事に演じている。もともとハイレベルな女優だが、最高に気合の入った演技を見せてくれる。
足の親指の爪が割れたり、指のささくれを血だらけになりながら剥いたり、背中の傷から黒い羽毛が生えてきたり、けっこうなグロシーンもあるが、全体としてはスリラーというより、芸術に身も心も捧げたアーティストの生き様を綴ったヒューマンドラマという感じだ。完全なる自己の燃焼を遂げるラストシーンは、鑑賞者によって幸か不幸かの判断は別れると思うが、どちらにしても衝撃的なラスト。一転、ホワイトアウトしてエンドロールが流れるあたりも十分に気を使っていて、作品に知性と気品を与えている。
<Raiting>
実に映画らしい作品。監督の手腕もさることながら役者の気迫が画面に乗り移ってる。大傑作!と喧伝する感じではないが、傑出した作品であることは間違いない。
<Traler>
あー
テーマ:映画館で観た映画
ブラック・スワン@ぴあ映画生活
- 2011.05.17 Tuesday
- 映画
- 02:26
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