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ブルーバレンタイン(Blue Valentine)

ブルーバレンタイン

広告で「ラブストーリー」と紹介されている映画なんてほとんどスルーなのだが、看板に偽りあり! ラブストーリーではあっても、それだけにとどまらない、人間の本質を描ききった傑作だ。

本作の製作に人生のほとんどを費やしてきたというデレク・シアンフランセ監督は、いままさに離婚の危機をむかえている夫婦の現状と、出会った頃の様子を交互に切り替えながら、二人の心の変化をドキュメンティックに描いていく。

各人物のキャラクター設定は類型的で、それぞれが実に分かりやすい対比構造になっている。家族、家柄、教育、愛に求めるもの、仕事への取り組み方、人生の何に重きをおくか…など。しかし、その類型的な構造に対し、主演のライアン・ゴズリングとミシェル・ウィリアムズは、おそろしくリアリティのある演技で役に魂を吹きこんでいく。

実際に二人の演技はほとんどアドリブで、監督はセットとシチュエイションだけ用意し、そのなかで二人は「自分ならどうするか?」ということを必死に考えながら演技を行ったという。二人ともシナリオの練り直しなどに深く関わっているので、キャスト・スタッフすべてが濃密な時間を共にしながら作り上げた作品だといえる。

家族と過ごすことだけが自分のすべてだと言い切り、愛さえあればどんなことでも乗り越えられると信じる夫のディーン。夫より社会的地位が高く収入もはるかに良いが、それゆえ日々の生活に不満が募る妻シンディ。ペンキ屋のディーンは朝から酒を飲んでは仕事を軽く切り上げ、日々を娘と遊ぶことに費やしている。大きな子供のような夫と娘の尻をたたき日常生活を滞りなく行おうと悪戦苦闘するシンディの姿は、よくある夫婦の光景に見える。しかし二人は倦怠期やすれ違いによって夫婦関係の重大な危機に陥っていた…。

本作の素晴らしい点は、まず役者の役作りの凄さ。”倦怠期の夫婦”と”馴れ初めから結婚まで”を描く回想シーンの両方を本人たちが演じているのだが、この変わり様が実に見事! 冒頭のシークエンスで、ミシェル・ウィリアムズは10kgほども体重を増やしたような、太ってちょっとだらしない体型になった妻を演じ、ライアン・ゴズリングは変なメガネと最高にダサイ服を身につけた奇妙なハゲおっさんを演じている。この二人が回想シーンへと切り替わると、びっくりするほどかわいい金髪女子大生と快活な引越し屋のイケメン兄ちゃんになる。これを見るだけでも金を払う価値がある、ホント。

さらに素晴らしいのは、「ある夫婦の離婚」という他人ごと、もしくはどこにでも転がっている話に、普遍的な男と女の問題のすべてを叩き込み、前述したとおり迫真の演技と秀逸な演出、アップを多用した生々しい臨場感に満ちた映像などを駆使し、映画のプリミティブな表現手段の魅力を極限まで引き上げているところだ。

愛と優しさに満ち、妻の全てを受け入れてくれたかつての夫、ディーン。美しく聡明で上昇志向を持った魅力あふれるかつての妻、シンディ。しかし生活という現実が二人を変えていく。それはどうしようもないことだとも思うし、そうならないようになんらかの手段を講じないと夫婦という関係は簡単に壊れてしまうという示唆でもある。

見ていて辛いなぁと思うのは、夫が若い頃と変わらずに「愛さえあればなんとかなる」と本当に信じていて、大好きな思い出の音楽をかけて「君と娘さえいればなんにもいらないんだ!」と叫ぼうと、すっかり変わってしまった外見と同様に、若い頃の互いの恋愛感情を取り戻すことができないところ。精神的にどんどん自立していく女性の強さと、いつまでたっても大きな子供のまんまの男。その構図がたまらなく胸を突き上げる。

作品の評価は概ね良いようだが、鑑賞者の人生がどういう状態にあるか(またはかつてどういう状態だったか)、ということが評価に直結するような気がする。「二人はラブラブだもんね」という状態の若いカップルが二人で直視するには少々むごい作品だとも思う。だけど、ある程度山あり谷ありの人生を乗り越えてきた人にとっては、これほどリアリティーのある作品もないだろう。

さて、その山あり谷ありをわずかながら乗り越えてきた身として本作を鑑賞すると、ラストシーン含めて、救いようのない話というよりは、なんだかちょっと心温まる、ポジティブな内容にも思えるのだ。誰だってこういう問題は普遍的に抱えるんだな、という妙な親近感もあるし、ラストの独立記念日の花火がディーンの”独立”を祝っているようにも見えるし、娘を押し返して背を向けることでやっと現実味のある男になれるのか、という予感も感じさせ、悲惨な結末というよりは、お互いにとって「今はこれがベスト」という選択ではなかったかと思ったりもするのである。これもまた人生だ。

<Raiting>
低予算映画だけど作品にかける情熱と執着心はものすごいものがある。キャスト・スタッフ一体となって作り上げた傑作。音楽もいいよ。


<Trailer>


あー
テーマ:映画館で観た映画
ブルーバレンタイン@ぴあ映画生活

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