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昭和16年夏の敗戦

本書は第二次世界大戦で太平洋を舞台に日米が激突した昭和16年開戦前に、現場の第一線で活躍していた若手の官僚や商社の民間人ら当時のスーパーエリート達が総力戦研究所で行った日米戦争のシュミレーションの結果と、実際の開戦までの政府・軍部の動きを忠実に追ったドキュメントである。

初版は28年前の1983年。近年は政府系の仕事のほうが目立っている東京都副知事の猪瀬直樹による名著で、文庫本化されてけっこう話題になった。

「日本とアメリカが戦争したこと知らない若者がいる」とマスコミがよく伝えるが、仮に実際にいたとしても、そういう人は若者に限らずいつの時代も”アホ”として存在するのでどうでもいいのだが、日本がいかにしてアメリカとの戦争に突入していったかという問題について事実を知っておくことは、歴史認識という以上に日本人の気質を知る上で重要だと思う。

本書が伝えるのは、当時の政府・軍部が、一直線に妄信的に日米決戦に突入していったわけではないことと、当時においても日米戦が非現実的であり起こしてはならない戦争であるという認識は十分にあったということだ。本書では開戦が避けられなかった理由として、現在でも議論百出している省庁の縦割り、官僚組織の硬直化、さらに現在と通じる大きな問題として、政治家が軍部(軍官僚)をコントロール出来ないことがいかに重大な結果を招くかということが丹念に検証されている。

軍部と聞くと戦場で血を流しながら戦っている兵隊を思い起こすが、実際はそんな勇ましいものではなく、軍部を形成しているのは官僚である。机上で作戦立案する現在の官僚と何ら変りないホワイトカラーのエリート達だ。彼らが自分の省庁の利益のために、または省庁内での自分の立場を保持するために無謀な戦争へと進んでいくさまは、現在の官僚が無軌道に国民の資産を食いつぶしていく様子とまったく同じ構造なのだ。

そんななか、開戦派として近衛内閣を倒閣した張本人である陸軍大臣東条英機が、天皇の意思により開戦を止める最後の切札として内閣総理大臣に任命されるくだりは、多少小説的な脚色はあるにせよ本書のクライマックスのひとつだ。東条英機をもってしても開戦は止められなかったのは周知の事実であり、東条英機が開戦を引き起こしたとの見方も”時の総理大臣の責任”という点においては仕方がないかもしれない。しかし猪瀬氏は東条もまた開戦への大きなうねりに飲み込まれたひとりであることを切々と描いていく。

猪瀬氏は、若く柔軟で明晰なエリートであろうと、内閣であろうと、まして天皇のご意思があろうと、官僚組織が一度敷いたレールを曲げたり分断することは不可能であり、それは官僚自身にも不可能であるという事実を解き明かす。この思いが現在の猪瀬氏の政治的活動の基盤となっているのであろう。

官僚といえども結局は僕達と同じ日本人である。保守を基礎とし組織を守り付和雷同しながら生きていくという官僚の姿は我々の鏡でもある。国の大事より自分の小事のほうが大切なのも仕方ないのかもしれない。だからこそ、日米開戦という題材でありながら現在進行形の問題として、官僚組織をコントロールするシステム作りがいかに大事かということを、痛感せざるを得ない。

物語としても、当時の政治や社会状況を知る資料としても、現在の問題を考える上でも、とても面白く読める一冊!

BKM
テーマ:注目★BOOK


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