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hagacube
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このブログでは、劇場公開時に観た映画、DVD、オンデマンド動画などの映像作品を中心に、音楽の新譜/旧譜、スポーツなどエンターテインメント全般について、複数ライターが極私的な見解を書いています。
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すいかエンタ!について。

記事にはネタバレを含むものもありますので、未見の作品や各スポーツなどについて、先に結果などを知りたくない方はご注意ください。

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劇場版SPEC 〜結(クローズ)〜

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そろそろ上映も終わりかなと思って、劇場版SPEC 〜結〜の『漸ノ篇』と『爻ノ篇』を一気見してきた。

テレビドラマ版の放映時からずっと見てきたシリーズの完結編だけに数々の謎が解けて、積み残った矛盾やつじつまの合わないところは自己解釈で乗り切って、まあまあこれでよかったのかな、と思える作品だった。

”身近”なところで起こる”すごいこと”が、最終的にはなにやらとてつもなく大袈裟な話に(取ってつけたように)変化していくというのは、あの「少林少女」の悪夢を思わせたのだが、さすがに堤監督はレベルが違ったようで、SPECという作品の面白さの根幹を失わずに、巨大な風呂敷をなんとか畳んでくれたようだ。

戸田恵梨香をフェチ的に好きな身としては、何時間でも戸田恵梨香を眺めていればそれで満足なのだが、それにしても『爻ノ篇』はいくらなんでもやりすぎの感が…。お金をかけて大きなセットを組んだのはいいけど、だからといって上映時間の殆どをそのセットだけで、あとは延々とCG映像と長台詞が続くのには辟易した。

とはいえ、『ケイゾク』(1999年〜)を含めると15年に渡る物語をなんとかまとめあげたのは、軽薄で安易で糞みたいな作品が溢れかえる邦画の中では相当な偉業だと言える。

自分を犠牲にして無間地獄に落ちた当麻を唯一感知する瀬文というラストシーンは長い長い物語のラストシーンとしてはハッピーエンドだが、こちらとしては強烈にキュートな当麻というキャラクターにもう会えないのか…ということがとても寂しく感じられた瞬間でもあった。戸田恵梨香が今後の女優人生で当麻以上に魅力的な役柄を作り出せるかというと可能性は低いように思う。もちろん、そういう役をひとつでも手にできるという事自体、物凄い才能なんだけど。

<Raiting>
パラレルワールドを扱った過去作やマトリックスを始めとする傑作SF作品などの影響が大きく、プロット自体は古典的とさえ言えるようなものだったが、多彩な役者陣、戸田恵梨香&加瀬亮の黄金コンビ、鑑賞者の各キャラクターへの思い入れによって、SPECファンには納得の作品になったのではないだろうか。
星星星★★

テーマ:映画館で観た映画

ゼロ・グラビティ

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話題のゼロ・グラビティ、大傑作との呼び声も高いが、確かにすごい作品だった。これぞ映画館で観るための映画!

これまで3D映画については常に悪感情を持って論評してきたが、この作品に関しては、キャプテンEO以来、本当に意味のある3Dだった。次来るぞ!と分かってても何回も目閉じたもんね。

アルフォンソ・キュアロン監督といえばパンズ・ラビリンスやハリポッター、アクション映画長回し部門のNo.2トゥモロー・ワールド(No.1はトム・ヤム・クン!だ)、そしてオレ的ベスト10に常に入ってくる大傑作「天国の口、終りの楽園」と、素晴らしい映画をガンガン撮っている偉大なメキシカン。

そんな監督が1億ドルもつぎこんだ!内容までちまちま書かないけど、とにかくものすごい映像とシンプルでストレートなストーリー、91分という適度な長さで、見事な映画となった。

まあしかし、極端なローアングルで撮るサンドラ・ブロックのラストシーンは不屈の人間賛歌というより、巨人化した新人類の誕生のように見えて、ここまで大袈裟じゃなくてもいいんじゃない?と思ったけど、この極端さの表現のために全てはあったということなんだろうね。

宇宙物理学的にどこまで正確なのかは分からないが、とにかく今回もアルフォンソ・キュアロン監督は裏切らなかった!ということだ。

清州会議


今朝深夜上映で話題の「清州会議」をみてきた。

好きな役者がたくさん出てたけど、まあまあだった。清州会議という題材をダイナミックに再構築したわけでも、抱腹絶倒笑いが止まらないお話にしたわけでもなく、役者の力量だけで乗り切った、みたいな作品だった。

三谷監督の作品ってまあいつもこんな感じだけど。

大泉洋は適役だったが、いつ極限まで弾けるのか!と期待してみてるうちに、大して何もなく終わってしまった。

でも邦画としてはレベル高いので…
星星星★★
 
鉛筆あー

脳男

脳男

原作は未読。劇場予告だけみた状態で鑑賞。

予告ではけっこう面白そうだったので、それなりの期待はもっていたのだが、予告を超えない出来というか、はっきり言って映画としては酷い出来の作品だった。

脳というデータベースには膨大な情報が瞬時に記憶されるが自発行動が一切できない、という障害を持つ子どもが殺戮マシーンとして育てられ、極端に偏向した正義というプログラムを遂行するというストーリー。これ自体はとても面白いと思う。

主演の生田斗真は動きやビジュアル面も含めて独特の個性を発揮していたし、撮影も日本での限界によく挑戦していて西部警察並みには爆破シーンなども頑張っていた。

しかし映画としての詰めがとことん甘くて、どうしても作品に入り込めない。魂は細部に宿るというが、まさに細部が適当で薄っぺらいために、本筋の良さが根こそぎ失われてしまった。

冒頭のバス爆破のシーンから酷い。松雪泰子がタクシーの屋根越しに爆破を見て被害者の子どもに駆け寄るというシーケンスだが、バスの扉が閉まって乗り損ねたおかげで運良く爆破に巻き込まれなかった、という流れが雑すぎ。

まず、バスは出発前に乗客が駆けよればドア開けるよ電車じゃないんだから。まあいいや、で、爆破で死ぬ子どもたちが窓から松雪泰子を小馬鹿にするのだが、これがもう”僕たち死にますよ”フラグがあざとすぎて冷めることこのうえなし。まあいいや、で、ものすごい土砂降りのなか全身びしょ濡れ(つーかもうプールに飛び込んだぐらいの濡れっぷり)になりながらタクシーに乗り込むんだけど、こんな雨の中、駅のタクシー乗り場から乗れよ、しかもこんな雨の中あんな場所で客待ちしてるタクシーなんかいないっつーの、そもそもあんなに濡れてまでタクシーに乗るか?少し待つだろ。まあいいや、で、案の定バス爆破が起こって子どもが燃えながらふらふら歩いてくるのを抱きしめて『だれか救急車をー!』って何度も叫ぶ、セカチューみたいに。もうこういう描写飽き飽きしてるし、ヒロイン気取ってないで自分の携帯で救急車呼べよ、そのほうがずっと早いだろ…。

冒頭のワンシーンで、こんなに何度もため息をつきながら”まあいいや”と思わなければならない作品ってなかなかないと思う。

こういう描写が最初から最後まで、とことん細部にわたって繰り広げられる。会話シーンで相手が言い淀んでもいないうちに「続けて」とやけに性急なテンポでつなぐかと思えば、逆に脳男の過去を語るシーンではダラダラと眠気をもよおすほど退屈な編集になってるし、全部取り上げてたらキリがないほど、とにかく細部への気配りが圧倒的に不足している。

それと俳優陣も酷い。常々思っているのだが江口洋介という役者は自分の演技プランを組み立てるとか、監督と役柄や台詞について話し合うとかあるのだろうか?「志村うしろ〜!」じゃないんだから、「黒田は凄いんだ」「黒田はな」「黒田って男はな」ってもうギャグだろ。黒田これから死にまーすって何回宣言すれば気が済むんだよ。普通なら監督に「これおかしくないすか?」とか進言するだろ。そんなことも言えないならテレビタレントだけやっとけ、と言いたい。

松雪泰子はどうせいつもの松雪泰子だろうと思ってたから期待もしてなかったが、それにしても夏八木勲、石橋蓮司、二階堂ふみ、染谷将太らも全員類型的すぎて最低の仕事っぷりだった。ほんと幻滅した。

しかし、シーンの組立も編集も俳優の演技も最低ということは、やはり監督の手腕が最低だということだ。職人的な瀧本智行監督にしてこの浮ついた仕事ぶりはなんなのだろうか?手堅い仕事が個性だったのに派手で新しいことを望まれて苦し紛れにやってみたら全然出来なくて超絶ダサい仕上がりになってしまったってことなのか?

結局、すべてのシーンについて、ある結果を見せたい、あるカットを見せたいばかりで、投手で言えば「球を置きに行く」ような演出ばかりになってしまったように思う。観客側に筋立てを追う楽しみが全くなく、予定調和の結果だけを提示されるのは、いくら映画好きでも退屈極まりない。

テレビ局が製作について予算も大きくなった時点で、瀧本監督が自由にやれる環境はなくなってたのかもしれない。そう思うことにして溜飲を下げよう。

<Raiting>
生田斗真の良さがすべて出し切れなかったのが惜しまれるし、染谷将太&二階堂ふみコンビも無駄遣いになってしまった。監督取っ替えてシナリオをもっとコンパクトにしただけで、今の100倍くらい良い作品になると思う。話そのものは面白いと思うし続編への期待感はある。

ゼロ・ダーク・サーティ(Zero Dark Thirty)

ゼロ・ダーク・サーティ

世界を駆け巡ったビン・ラディン殺害のニュース。その結果に至るまでの10年の捜査と特殊部隊による急襲シーンまでを丹念に追った作品。監督は『ハート・ロッカー』でアカデミー賞を受賞したキャスリン・ビグロー監督。

9.11のアメリカ同時多発テロ事件の首謀者とされ、それ以前のアメリカとの関係やサウジとブッシュ政権の癒着など、真偽入り乱れた情報が錯綜したビン・ラディンという人物。彼はイラクの大量破壊兵器の査察から開戦まで突っ走るアメリカにとっての”正論”を唯一補強する存在だった。

その最重要人物ビン・ラディンを驚くほどの執念で追い続け、ついに居場所を特定するのがCIAの女性捜査官マヤ。彼女は拷問を主とした捜査方法に最初は抵抗を感じながらも、仲間が殺されたことを契機に取り憑かれたようにビン・ラディンを追い続ける。

本作は、ほとんどマヤの一人舞台といった内容だが、ジェシカ・チャステインが華奢で聡明な捜査官を見事に演じている。

アメリカが威信をかけ、膨大な時間と資金と人間を費やしてたどりついたであろうビン・ラディン発見というミッションを、映画では彼女一人の功績として集約させて描いている。その大胆な構成を荒唐無稽に感じさせないジェシカ・チャステインの演技は素晴らしいの一言。彼女の存在感、演技の深みが本作に迫真性を与えている。

上映時間のほとんどが派手なアクションを排した情報戦で、ややもすれば地味なシーンが続くのだが、目を離す隙もないほどの緊迫感が画面から溢れ出ていて、最後まで一気に見せる。

ラストのアメリカ軍対テロ特殊部隊による急襲シーンは凄まじい。まず、ヨルダンに作られたというセットが素晴らしい。そして部隊の動き、爆破シーン、殺害の様子など、怖いほどのリアルさで迫ってくる。映画を楽しんでいるというよりも、自分が現場に入り込んで恐怖を肌で感じているような錯覚に陥る感覚だ。

ビン・ラディンを捕縛ではなく殺害するというミッションの理由付けを、作中ではマヤの仲間を殺されたことへの怒りをとして成り立たせていたが、実際にはどうだったのか。真相はまた別のところにあるのだろう。

<Raiting>
本筋とは関係ないが、相変わらずカメラワークがいい。アングル、構図、ボケ味を強め主体を浮き立たせるカメラの作り出す絵は、どのシーンを切り取っても1枚の写真として残したいほど素晴らしい。作品は監督の技量、構成、俳優陣の演技を含めて、きわめて精緻に作られた第一級の作品だ。


<Trailer>


あー
テーマ:映画館で観た映画
ゼロ・ダーク・サーティ@ぴあ映画生活

DOCUMENTARY OF AKB48 NO FLOWER WITHOUT RAIN 少女たちは涙の後に何を見る?



AKB48を語る時に「よく知らないのだが」とか「ファンというわけではないが」という常套句を枕詞に、的外れの持論を展開する輩が大発生してるわけだが、知らないなら語るなよウゼーから、といつも思う。

よく知ってるからこそ楽しめるものというものは世の中にたくさんあって、門外漢にはちっともピンと来ないなんてのはどこにでもある話。ピンと来ないからといって大げさに揶揄したってなんの意味もない。これはエンタメであって、国民がどうしても語らなければならない政治とか生活の問題じゃない。

なんでこんなことを書くかというと、本作はAKB48をよく知ってる人やファン以外の人が劇場に足を運んでも、作品そのものの良し悪しが全く判断できないと思うからだ。生半可な知識でこの映画を観ても、なにがポイントなのか、ほとんど理解できないだろう。なので興味のない人はぜひ「観ない・語らない」という選択をしてほしい。

物語はよりディープになり、HKTと初顔合わせのあとSKEの中西優香のもとで嗚咽する指原、恋愛禁止について語る菊地あやか、増田有華の活動辞退発表の影で泣き続ける大島優子、前田敦子卒業の裏側でさまざまに交錯する各メンバーたちの思い…こういったシーンの数々は、個々人のプロフィールを知らないと共感するのは難しい。しかしAKB48をよく知る人にとっては、これほど重い内容もない。

映画は、もはや楽しいシーンなんて”りのりえコント”くらいのもので、あとはひたすら過酷な少女たちの葛藤が描かれていく。

過酷なシーンの連続の中でも特に、平嶋夏海の辞退報告の舞台裏でむせび泣く戸賀崎支配人の姿と、「私たちの恋愛は誰からも応援されない」と語る高橋みなみの表情は、とてつもなく重く哀しい。ともにAKB48の屋台骨を支える重要メンバーである二人が、自らが構築するシステムに翻弄されていく姿を残酷に切り取っている。

東京ドームの舞台裏で、衣装や髪を直しメンバーに出番を指示しながら声を上げて泣くたかみな、移動通路の途中で泣き出し座り込む峯岸、前田に卒業を思いとどまらせようとする篠田、唐突に卒業を発表する板野、総選挙の結果にショックで泣き崩れる高城や光宗、組閣で昇格できずに号泣する研究生、ルール違反で辞めていくメンバーたち…。

映画は、苦労も悲しみもすべては立ち位置0=センターを目指すため!という作り方をして、一応の落とし所を作ってはいる。しかし実際は在籍メンバー全てがセンターを狙えるわけではなく、それはこの若さにして自らの可能性の限界を知ってしまうということでもある。行くも退くも地獄というある種異常な芸能世界の有り様を、冷静に見つめ撮り続ける高橋監督の眼差しは、敗れ去る者たちへの慈愛に満ちている。

<Raiting>
前作は過酷な内容であっても戦場映画のカタルシスのようなものが確かにあった。圧倒的な輝きがあった。今回はそういうピントの山はないが、夢を追い夢に敗れる少女たちのリアルな姿を丁寧に追った。これはもはやアイドル映画でもなんでもない。AKB48という素材を用いて魂の葛藤を真摯に描いた、高橋監督の哲学が反映された見事なドキュメンタリー作品だ。(しかし八割方みたことのある映像というのはいちじるしい萎えポイント…)


<Trailer>


あー
テーマ:映画館で観た映画
DOCUMENTARY OF AKB48 NO FLOWER WITHOUT RAIN 少女たちは涙の後に何を見る?@ぴあ映画生活

テッド(Ted)

 テッド

封切りからだいぶ経って、面白い面白いと散々聞かされたあと、やっと観に行ったのだが、確かに面白かった!

最初は、いつまでたってもガキのままの彼氏にいらついて「テッドを追い出せ!」なんて言う糞彼女にムカツイていたんだけど、この世界の住人はテッドを異物、もしくはある種の社会不適合者として見てるのではなく、あくまでも独立した人格として普通に認めているということなんだと気づいてからは、この愛おしいぬいぐるみがさらに魅力的に見えてたまらなかった。

たいていのこの手のファンタジーに出てくる”もの”は、妖精でも宇宙人でもなんでもいいんだけど、僕らが守ってやらなければいけない存在、庇護者を必要とする存在なんだけど、このテッドはちゃんと仕事について昇進もするほど社会的能力に長けている。頭もいいしハートも強い。だから「家から出ていって!」ってのは死の宣告みたいなもんじゃなく、本当にリアルな悪友を追い出す感覚であって、テッドという明らかに異質な生き物をなんの憐憫もなく、まるごと認めてる。

同情も、過剰な偏愛もなく、リアルな幼馴染として、主人公とテッドはイーブンの関係で固く結ばれている。だからこそ彼女も真剣に悩みいらつき感情を爆発させるのだ。だからこそ主人公が「お前なんか現れなきゃよかった!」と吐き捨てた時、テッドは悲しみに暮れて消え入るのではなく、ボコボコに主人公を殴るのである。殴って殴られて、それでも二人の友情はこれっぽっちも傷つかない。もう涙腺崩壊である。

この普遍的な、親友と恋人と自分の関係を描くのに、古今東西の差はない、ぬいぐるみだろうが赤鬼青鬼だろうが、もうなんだっていいのだ。こんな関係、こんな友情に僕らはひたすら憧れるのである。

<Raiting>
アホだけど心優しく実直な役がとにかくハマるマーク・ウォルバーグと、『ブラックスワン』で素晴らしい演技を見せたミラ・キュニスは、荒唐無稽なストーリーであるにもかかわらず、見るものに必然性を感じさせる丁寧な演技で、作品の完成度を見事に高めていた。文句なしに面白い作品だ。ただ町山智浩の翻訳はちょっとやりすぎで、何度か興醒めする場面も…。まあそれなりに言い分もあるようだが→http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20130120


<trailer>


あー
テーマ:映画館で観た映画
テッド@ぴあ映画生活

アウトロー(Jack Reacher)



トム・クルーズといえばマイケル・マン監督と組んだノワールものの傑作『コラテラル』(2004年)が印象的だ。あれもシビれるような辛口映画だったが、本作はさらに骨太な内容となっている。

元陸軍の優秀な捜査官ジャック・リーチャーが、大量殺人の裏に潜む真実を冷徹に暴いていくという内容だが、トム・クルーズの抑えた演技と緊張感のあるリアルなアクションで、見事な作品となった。

監督は『ユージュアル・サスペクツ』で珠玉の脚本を描き上げたクリストファー・マッカリー。ジョニーデップ主演の『ツーリスト』があまりに糞作品だったので心配だったが、今作では監督・脚本を担当し見事な手腕を披露している。『ツーリスト』ももともとトム・クルーズ主演で話が進んでいた作品だし、『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』もすごく面白い作品だったので、トムとの相性が抜群なのだろう。

コラテラルがカミソリの切れ味なら本作はナタのようなずっしりと重みのある切れ味。とにかくジャック・リーチャーの人物設定が抜群にいい。住所も連絡先もなく放浪者として生きるジャック・リーチャーの信条はただひとつ、正義を貫くことのみ。ラストのバスのシーンなんてシビれまくり!

共演者も充実していて、名優ロバート・デュヴァルはもちろん、敵ボスのヴェルナー・ヘルツォーク(ドイツの映画監督)の際立った個性は必見。ヒロイン役のロザムンド・パイクもはまり役で、このコンビで続編を1本観たい感じ。 

日本での一般的なトム・クルーズ像って薄っぺらいセレブ役者のように思われてるフシもあるけど、この人ぐらい映画好きのツボを心得てる俳優(兼プロデューサー)もなかないないと思う。スタイリッシュなSFからド変態映画、そして本作のような映画らしい映画まで、すこぶるハイレベルな作品に仕上げてくる。次回作を常に期待してしまう数少ない俳優だ。

<Raiting>
謎解きは案外あっさりしたもので、物語もシンプル。オールドスタイル(意図した)ではあるが劇場映画はこのぐらいが気持ちいい。全体を貫く硬質な雰囲気、カーチェイス、臨場感あふれる映像など、文句なしに満点。


<Trailer>


あー
テーマ:映画館で観た映画
アウトロー@ぴあ映画生活

評価:
フランク・ダラボン,チャック・ラッセル,ロブ・フリード,ピーター・ジュリアーノ,スチュアート・ビーティー
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
¥ 1,685
(2012-09-14)


悪の教典

悪の教典

学校内で大量殺戮を行うスプラッター作品。原作も人気だし、映画の前評判も高かったが、実に見応えのある面白い作品に仕上がった。

サイコパス絡みの作品というのは外国作品を中心にスプラッター / ホラーの定番でもあるのだが、学校内で生徒達が一方的に次々と殺されていくハードな描写は、現代の邦画の表現限界のなかでは喝采ものだ。こういうボーダーラインの絶妙な超え方はさすが三池崇史監督だ。

サイコパスというのは自分に利することだけが行動原理であり、その利己的な思いを満たすことがすべてに優先する、というもの。他人に対する共感力がそもそも欠如しているらしく、目的遂行に際して良心の呵責などがない。だからといってその病質を持つ誰もが殺人を犯すわけでもないのだが、”身近にいてもわからない異常人格者”という怖さはある。

その怖さを主演の伊藤英明は見事に演じている。前半部分では伊藤英明のパブリックイメージも幸いして、蓮実聖司というモンスターの異常性が自然にクローズアップされていく。そして蓮実がゾーンに入ったときの瞳孔の開きっぷりなどを含めて、後半はこれまでのイメージを打ち破る演技力を見せる。

『海猿』のイメージが強すぎて平凡な青春スターという評価止まりだった伊藤英明の役者としての価値が、本作で上方修正されたと思う。作品選びも抜群にうまいので、よっぽど良いプロデューサーがついているのか、本人のスキルが世間の認識より桁外れなのか、いずれにしても今後が楽しみな役者となった。

出演者は豪華の一言。生徒役は『ヒミズ』のベネツィア受賞コンビ染谷将太&二階堂ふみを中心に、『桐島、部活やめるってよ』の浅香航大&松岡茉優、『バッテリー』の林遣都、ダルビッシュの弟KENTAやFlowerの水野絵梨奈まで、めぼしい若手俳優全部集めました的なキャスティング。

山田孝之や平岳大といったド変態役者に加えて吹越満や山中崇まで出てるとなると、個人的には園子温に撮ってもらいたかった、という気にもなるが…。

物語はストレートで、この手の映画作品としては凡庸でもあるのだが、なんのフックもなく逮捕されてしまうラストシーンを、「続く!」という印象的な結末が救っている。サイコパスものとして喧伝されているが、実は人格の転移を含めてオカルト的な作品だ。似たようなTVドラマもあったが、全体的にはこれはこれで十分個性的だし説得力もある。

それにしても、映画化不可能とまで言われた長い原作をコンパクトにまとめたうえで、これだけ大人数の役者を自在に操って破綻のない作品を撮り上げた三池崇史監督の手腕には脱帽だ。エンターテインメント作品としては極上の部類だと思う。感動とか深みとかあるかどうかは別にして、とにかく面白い!

<Raiting>
邦画レベルとしては満点の出来といってもいいのだが、個人的には映像的に新鮮味がなかった点が惜しまれる。ショットガンの銃撃音などサウンド的には工夫もあったが、題材的にはもっとブチ切れた斬新な映像が観たかった。三池監督にはそれが出来るはずだという期待もあった分だけ1ポイント減点。


<Trailer>


あー
テーマ:映画館で観た映画
悪の教典@ぴあ映画生活


009 RE:CYBORG

009 RE:CYBORG

観終わった瞬間にまた最初から観たくなった。とてつもなくかっこいい新しい009の誕生だ!

制作がProduction I.Gで監督が『攻殻機動隊 S.A.C. SOLID STATE SOCIETY 3D』の神山健治とくれば、どうしたって”あの造形とあのトーンとあの音楽”をすぐさま連想するが、まさしく本作は冒頭から”攻殻機動隊の造形と独特のクールなトーンと鼓膜を刺激する音楽”で始まる。

封切り前からProduction I.Gの造形について賛否が交錯していたが、出来上がった作品をみれば、これほど完璧にハマったデザインもないと思う。

『サイボーグ009』はもともとスタイリッシュな石ノ森章太郎のSF作品群の中でも、ズバ抜けてクールでスタイリッシュな作品だったが、現代のアニメーション技術の世界的水準を考えれば、オリジナルのアニメチックな造形をリアルなモデリングで再構築することは必然だったと思う。

幼い頃に単行本で読んで以来、009のかっこ良さに圧倒され続けている身としては、オリジナルデザインの素晴らしさは重々理解しているが、はるか昔に憧れた奴らがさらに100倍くらいかっこよくなって目の前に現れた感じだ。

009の覚醒のために六本木ヒルズにダイブする003から始まって、005の戦闘シーンや002の凄まじい飛行シーンに釘付けになっていると、それらすべてをはるかに凌ぐ009の超絶アクションが始まった瞬間、おもわず座席で「かっこいぃ…」と声を漏らしてしまった。

ドバイ上空でジェットと遭遇するシーン、核爆発の衝撃波を超える加速で走るシーン、004や006がてこずる敵軍を一瞬にして全滅させるシーン…、ド派手な戦闘能力ではなく加速という特殊能力を009に与えた石ノ森章太郎のセンスは今でも十分に驚嘆に値する。009はやっぱりとてつもなくかっこいい!

唯一、ちょっと気になるのが、009自体を知らない層にこのスタイリッシュな傑作アニメがどこまで響くのかということ。本格的なリブート作品から始めてもよかったかな、という感じもある。リブートものと続編と、とにかく神山監督にこのテイストで何作か撮ってほしいと思う。

<Raiting>
これじゃまんま『攻殻機動隊』じゃないかという批判の声もあるが、そういう人は観ないという選択をするしかない。これはあくまでもProduction I.G版009なのだから。009はさまざまな作品がDVD化されているので、自分にあった009を探して楽しめばいいと思う。個人的評価は満点!


<Trailer>


あー
テーマ:映画館で観た映画
009 RE:CYBORG@ぴあ映画生活

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