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このブログでは、劇場公開時に観た映画、DVD、オンデマンド動画などの映像作品を中心に、音楽の新譜/旧譜、スポーツなどエンターテインメント全般について、複数ライターが極私的な見解を書いています。
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すいかエンタ!について。

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非選抜アイドル

国民的アイドルなどと言われるようになってしまったAKB48だが、その中身は格差社会と言われるようになった昨今の社会状況を反映し、有名なメンバー(=選抜)とそうでないものの格差は極端なくらいに存在する。

毎日のようにテレビに登場する選抜メンバーに対し、いわゆる「干され」と称される非選抜メンバーはテレビに映るだけでファンは大騒ぎ。いわゆるAKB特有の秋葉原での劇場公演でしかほとんど見ることはできない。ファンは常にその格差のあり方について議論し、「○○が運営に推されないのはおかしい!」などと盛り上がるなど格差そのものが売りになっている。

グループアイドルにある程度の格差は必然とは思うが、ここまでそれを強調し売りにしてきたグループは面白い。そうした中で話題にのぼることも少なく、AKBのファンさえ知らない可能性があるメンバーそれが『非選抜メンバー』だ。

本書は声優になりたかったのに偶然アイドルになった著者が、人気を獲得して選抜入りという道を向いてないと敢えて捨てて生き残り戦略を考える中で「公演の便利屋」「非選抜アイドル」というアイデンティティの確立に至るまでが淡々とした視点で書かれており、文章にも全くアイドル的な感じがないのが面白い(新書だし)。

またAKBの特異な考え方(例えば、容姿を重視しない採用姿勢や、アイドルとして完成しないことを重視するなど)にも触れられるという点で非常に興味深い。格差社会やネットによる多様化(ネットがなければ干されメンバーなどはその個性を知ってもらうこともできなかっただろう)などと合わせて、なぜ今という時代にAKBが流行ってしまったのか、などに興味のある人にもオススメ。




昭和16年夏の敗戦

本書は第二次世界大戦で太平洋を舞台に日米が激突した昭和16年開戦前に、現場の第一線で活躍していた若手の官僚や商社の民間人ら当時のスーパーエリート達が総力戦研究所で行った日米戦争のシュミレーションの結果と、実際の開戦までの政府・軍部の動きを忠実に追ったドキュメントである。

初版は28年前の1983年。近年は政府系の仕事のほうが目立っている東京都副知事の猪瀬直樹による名著で、文庫本化されてけっこう話題になった。

「日本とアメリカが戦争したこと知らない若者がいる」とマスコミがよく伝えるが、仮に実際にいたとしても、そういう人は若者に限らずいつの時代も”アホ”として存在するのでどうでもいいのだが、日本がいかにしてアメリカとの戦争に突入していったかという問題について事実を知っておくことは、歴史認識という以上に日本人の気質を知る上で重要だと思う。

本書が伝えるのは、当時の政府・軍部が、一直線に妄信的に日米決戦に突入していったわけではないことと、当時においても日米戦が非現実的であり起こしてはならない戦争であるという認識は十分にあったということだ。本書では開戦が避けられなかった理由として、現在でも議論百出している省庁の縦割り、官僚組織の硬直化、さらに現在と通じる大きな問題として、政治家が軍部(軍官僚)をコントロール出来ないことがいかに重大な結果を招くかということが丹念に検証されている。

軍部と聞くと戦場で血を流しながら戦っている兵隊を思い起こすが、実際はそんな勇ましいものではなく、軍部を形成しているのは官僚である。机上で作戦立案する現在の官僚と何ら変りないホワイトカラーのエリート達だ。彼らが自分の省庁の利益のために、または省庁内での自分の立場を保持するために無謀な戦争へと進んでいくさまは、現在の官僚が無軌道に国民の資産を食いつぶしていく様子とまったく同じ構造なのだ。

そんななか、開戦派として近衛内閣を倒閣した張本人である陸軍大臣東条英機が、天皇の意思により開戦を止める最後の切札として内閣総理大臣に任命されるくだりは、多少小説的な脚色はあるにせよ本書のクライマックスのひとつだ。東条英機をもってしても開戦は止められなかったのは周知の事実であり、東条英機が開戦を引き起こしたとの見方も”時の総理大臣の責任”という点においては仕方がないかもしれない。しかし猪瀬氏は東条もまた開戦への大きなうねりに飲み込まれたひとりであることを切々と描いていく。

猪瀬氏は、若く柔軟で明晰なエリートであろうと、内閣であろうと、まして天皇のご意思があろうと、官僚組織が一度敷いたレールを曲げたり分断することは不可能であり、それは官僚自身にも不可能であるという事実を解き明かす。この思いが現在の猪瀬氏の政治的活動の基盤となっているのであろう。

官僚といえども結局は僕達と同じ日本人である。保守を基礎とし組織を守り付和雷同しながら生きていくという官僚の姿は我々の鏡でもある。国の大事より自分の小事のほうが大切なのも仕方ないのかもしれない。だからこそ、日米開戦という題材でありながら現在進行形の問題として、官僚組織をコントロールするシステム作りがいかに大事かということを、痛感せざるを得ない。

物語としても、当時の政治や社会状況を知る資料としても、現在の問題を考える上でも、とても面白く読める一冊!

BKM
テーマ:注目★BOOK


新約聖書

佐藤優が新書で出版した新約聖書を読む。

宗教としてのキリスト教に興味があるというわけではなかったが、映画や小説や舞台などさまざまな作品でモチーフとして用いられている聖書をきちんと読んでみたいと思っていた。またローマ帝国から続く世界史の理解の助けになれば、とも思っていた。

だが、牧師さんのお話のテキストとして用いるならまだしも、本物の聖書をひたすら読み進めるなんて無理。本書の冒頭にもあるが、最初の「アブラハムはイサクの父であり、イサクはヤコブの父、ヤコブはエダとその兄弟たちの父…」と延々続くキリストの系図で何度挫折したか。遠藤周作の著書などもひと通り読んでみたものの、どうも「お伽話」っぽさから抜けきれない。そんななか手に取ってみたのが本書だった。

本書は佐藤優の解説付きで分かりやすく書いてはあるものの、内容自体は聖書そのものなので、けしてスラスラと楽しく読めるというものではない。しかし、ポイントポイントで佐藤優が解説する部分が興味深く面白いので、なんとかI&II巻を読破できた。

佐藤優については獄中記からテロについての書籍までいろいろと読んではいるが、現在ビックコミックで連載中の漫画のような”線が細く世間知らずなほど実直で正義感に溢れた人物”だとは思っていない。それ相応に裏も表も知ったしたたかな外交官(スパイに近いかも)だったのだろう。

ただ、彼の経歴や著書を通じて常に伝わってくるのは、宗教を真正面から分析し考察し神学を極めようとする経験なクリスチャンの姿である。そんな佐藤優渾身の新約聖書、ぜひ読んでみる価値はあると思う。

BKM
テーマ:注目★BOOK
評価:
佐藤優・解説
文藝春秋
¥ 1,000
(2010-10-19)

評価:
佐藤 優・解説
文藝春秋
¥ 1,000
(2010-11-17)


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